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次期学習指導要領の核心的課題

  • 4 日前
  • 読了時間: 5分


今年も5月13日から15日まで、東京ビッグサイトにてEDIX(教育総合展)が開催されました。私は、15日に堀田龍也先生の特別講演「次期学習指導要領に向けた教育の情報化の最新動向」を聴講しました。堀田先生は、東京学芸大副学長で、中央教育審議会の委員(情報・技術ワーキンググループ主査)を務めていらっしゃいます。

堀田先生のお話をお聞きして、文科省がどういう観点で次期学習指導要領を検討していることが見えてきました。私が印象に残ったテーマをいくつかご紹介します。


■学歴のミスマッチ


ご講演では、わが国の人口減少社会が進行し、2024年の私立大学の学部定員50万人が2040年には36万人へと28%減少し、これに伴い私立大学の数も35~60%減少するという予測が示されました。つまり、今ある624の大学のうち、ざっと半分がなくなるという話です。

さらに衝撃的だったのは、就業構造の変化により、2040年には事務職や文系人材が余剰になる一方で、AIやロボットを利活用する人材と現場人材が大幅に不足する、という予測です。労働需給のミスマッチは学歴のミスマッチに直結し、大卒文系と高卒普通科人材が余剰となるが、大卒理系と高卒工業科人材は不足すると予測されています。

いずれも財務省の財務制度等審議会の予測ですから、私立大学にとっては厳しすぎる内容かもしれませんが、長期的なトレンドとしては理解できます。


■クロスディシプリナリー人材の育成


文科省の2024年度推計では、公立普通科高校の文系が46%、理系が27%、専門・総合(文理融合)が27%となっています。文科省は理系人材不足に備えるため、文系から理系にシフトする高校教育改革を推進し、2040年までに公立普通科高校の理系と文系の比率をほぼ同程度とする方針(N-E.X.T.ハイスクール構想)を発表しました。

このうち、普通科に関係する施策としては、1)文理コースの柔軟な変更、2)STEAM教育の推進、3)教科や科目の枠組みの柔軟な組み換えなどがあげられています。これらの施策を見ると、文科省の狙いは文系から理系のシフトを促すのではなくて、文系と理系の両方の素養をもった文理融合(クロスディシプリナリー)人材の育成にあるようです。


中高でクロスディシプリナリー人材を育成するためには、文系志向生徒の数学・理科アレルギー克服が最大の課題となります。そのためには、両教科とも公式の暗記や計算スピードを競わせるのではなくて、学ぶ意味をしっかりと伝え、実際に使う場面を用意することが重要になります。

具体的には、Excelでアンケート分析を行うときに統計を教えたり、スマホのバッテリー(リチウムイオン電池)の寿命を化学電池の仕組みの実験で証明したりする授業の工夫が求められます。つまり、クロスディシプリナリー人材の育成には、社会課題を解決するために数学や理科が必要なことを実感できる「探究的な学び」の実践が不可欠となるのです。


■小学校との接続


次期学習指導要領の小学校の「総合的な学習の時間(以下、総合)」では、従来の探究活動に加えて情報の領域が加わる予定です。具体的には、総合は「探究の領域」と「情報の領域」で構成され、「情報の領域」は「ミニ学習ユニット」と「情報ブロック」から構成されます。「情報の領域」では、「情報ブロック」で情報技術に関する基礎的な内容を学び、そこで学んだ知識を「ミニ学習ユニット」で活用するカリキュラムになっています。このカリキュラムは小学3年~6年までの4年間で展開されます。

このように小学校のカリキュラムは変化していきますので、中学校は、入学してくる児童が何を(学習内容)、どのように(学習方法)学んできたかを正確に把握し、そのうえで授業計画を作成することが求められます。


すでに小学校ではGIGAスクール構想の成果により、生成AIを使った調べ学習や個人のペースで解き進める個別学習は日常的なスタイルになっています。また、算数や理科でプログラミングを使ったり、発表にパワーポイントやロイロノートを使ったりすることもほぼ全員が経験しています。それを知らずに、中学入学後に初歩的なネット検索やスライド作成など小学校の巻き戻しの授業を行うと、生徒の学習意欲は大きく低下しかねません。

小学校での学びを活かして、中学校ではさらに生徒の興味・関心を伸ばすカリキュラムを開発することがますます大事になっていくでしょう。


■IT専門人材の確保


文科省は情報活用能力を探究的な学びを支える基盤と位置づけ、小中高を通じて児童・生徒の情報活用能力を体系的・抜本的に向上させようとしています。

中学での具体的な取り組みが、情報・技術科の新設です。情報・技術科では、高校「情報Ⅰ」が前倒しで移行され、IoTなどの先端IT技術を教え、ものづくり(生産技術)の全てに情報技術の活用が共通基盤として組み込まれる予定です。文科省は、諸外国に比べて遅れていると言われてきた情報教育の巻き直しに本腰を入れようとしています。


一方で、情報・技術科を担当できる専門教員不足は明らかで、文科省は次期学習指導要領全面実施までに対応すべく「情報活用能力の抜本的向上を支える指導体制改善プラン」を策定しています。しかし、その中身は、他教科教員に技術・情報科の免許取得を促進する程度で

大きな成果は期待できそうにありません。

学校としては、外部のIT専門人材を確保し、特別免許状を取得させて授業運営するのが現実的な対策ですが、そうした人材をどうやって見つけ、勤務時間や処遇体系の折り合いをつけ、いかに学校の教育方針や教員の価値観になじませるかが課題となります。

中高で次期学習指導要領が実施されるまでにはあと5~6年ありますが、教員適性があるIT専門人材は取り合いになりますので、いち早く人材確保に動くことをお勧めします。

 
 
 

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