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中学入試の“良問”を考える

  • 7月25日
  • 読了時間: 5分

私学の夏休みは、2027年度入試に向けて試験問題を考える期間でもあります。どの学校の作問担当者も、いい問題を作成しようと知恵を絞っていることでしょう。

ところで、中学入試における“いい問題(良問)”とはどういう問題を指すのでしょうか。

当研究所の知る限りでは、明確な定義はなく、塾や教育関係者がそれぞれの見解で良問の定義をしているようです。

たとえば、教育関係者の間では、武蔵中学の「お土産問題」が「武蔵らしい」「受験テクニックでは解けない」という理由で良問だとされています。そのほかにも、考えた過程が評価できる問題や、学校の教育理念と一致している問題なども良問だといわれています。しかし、いずれも良問の条件が曖昧で、観念的です。そこで、当研究所独自に良問の定義をしたうえで、中学入試問題を考えたいと思います。


良問の定義

当研究所は、中学入試における良問を、「入学後の生徒が、学校が期待する成果を上げることを最も高い精度で予測できる問題」と定義します。つまり、入学後に学校の期待にどれだけ応える力を持っているかを測れる問題が良問だと考えます。

私学は、こういう生徒に育って欲しい、という教育理念に基づいて、独自の教育カリキュラムを作成しています。その教育カリキュラムを消化し、自分の成長につなげられる生徒に入学してもらいたい、と私学が考えるのは当然ではないでしょうか。


学校と受験生との関係をレストランと顧客の関係に例えるとわかりやすいと思います。それぞれのレストランは、お客様にこういう価値を提供したい、こういうコンセプトの店にしようと考えています。レストランは、ある程度来店する客層をイメージしながら、内装やテーブル配置、厨房や接客スタッフの人選、そして料理のメニューなどを決めているのです。中には、ドレスコードを定めることで客層を限定し、店のブランドや雰囲気を維持しようとするお店もあります。

レストランが顧客を選ぶのと同様に、私学の入試は学校が生徒を選ぶプロセスであり、入試問題は各校が提供する教育カリキュラムやシラバスを消化できる力があるかどうかを判断する材料と考えてはいかがでしょうか。


良問の作り方

育てたい生徒像は学校によってさまざまですが、「学力の向上」は私学に不可欠の教育目標なので、ここでは育てたい生徒像を「学力が伸びる生徒」とします。そして、学力は模擬試験の結果で測ると仮定します。

では、入試で入学後に学力が伸びる生徒をどうやって探せばいいのでしょうか。入試の総合点成績が良かった生徒でしょうか。それとも、算数の成績が良かった生徒でしょうか。

答えは、「調べてみないとわからない」です。


学校によって受験者層も異なり、入試問題も異なります。したがって、良問を作るには、それぞれの学校が入学した生徒の学力を分析して、学力が伸びる生徒に共通する入試成績の特徴を帰納法的に導く以外に手立てはありません。

分析のやり方を具体的に説明します。第1段階は、過去3年間の模試成績と入試総合点の成績との相関を確認します。正の相関ならば、入試成績上位者が入学後も学力を伸ばしていることが確認できます。

第2段階は、模試成績(総合、教科別)と入試科目別成績との相関を確認します。この分析によって、入試で国語の成績が良かった生徒は、入学後も国語の模試成績が良いか、など細かく検証できます。

第3段階は、模試成績上位者と成績下位者に分けて、それぞれの生徒の入試科目別の大問・小問別の回答率を分析します。科目別に、成績上位者が共通して高い正答率をあげ、かつ成績下位者が共通して低い正答率の問題を拾い出します。こうして抽出された問題に良問のヒントがあるので、その問題の特徴を研究します。そして、次年度以降の入試問題作問時にその特徴を反映させ、当該問題の正答率と入学後の模試成績を分析していきます。「この問題が解ける生徒は入学後に学力が伸びる」という仮説を立て、それを毎年検証していく作業が良問を作る方法です。


入試の常識を疑う

当研究所は、中学入試は受験時の学力をみるのではなく、入学後に学力が伸びる資質をみるべきだと考えています。この視点に立つと、中学入試で当り前とされていることにも疑問が生じます。

たとえば、「算数のできる子は頭がいい」とか、「4科入試のほうがバランスのいい子がとれる」といわれますが、本当でしょうか。これらも各校のデータで分析してみないと検証はできません。ここでは、「算数のできる子は入学後の成績も良いか」を検証する方法を説明します。


その前に、4教科ごとの受験生平均点と合格者平均点を公表している学校を選んで、平均点の差を比較してみました(学校間比較ができるように、100点満点に換算)。

図1.受験生と合格者との平均点差
図1.受験生と合格者との平均点差

共学・別学や入試偏差値(日能研)を問わず、どの学校も算数の差が最も大きくなっています。つまり、算数のできる子が合格しやすい入試になっていることがわかります。

さて、4科入試で「算数のできる子は入学後の成績も良いか」を検証するには、入学試験の算数の得点と他3科目の得点を算出し、それぞれの平均点より上か下かで、生徒を4つの象限に振り分けます。

図2.算数と他3科目の成績による分類
図2.算数と他3科目の成績による分類

このうち、第1象限と第4象限が「算数ができた」生徒で、特に第4象限が「算数だけはできた」生徒です。それぞれの象限の生徒の模試成績を調べれば、「算数のできる子は入学後の成績も良いか」を検証することができます。


このように、入学後の成績と入試成績をさまざまな観点から分析することで、作問だけでなく、入試の戦略が変わってきます。

 
 
 

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