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私学の生徒募集に必要なマーケティング発想(2)

6月18日
読了時間: 5分


前稿で受験生保護者のセグメンテーションの重要性を述べました。セグメンテーションにより共通の価値観やニーズをもつグループ(セグメント)を発見でき、自校が戦略的に定めたセグメントに対して効果的に資源投入を行うことができます。

私学の顧客である受験生は減少の一途をたどっています。どの学校も「受験生に選ばれる学校」を目指していますが、どの受験生にも選ばれる学校になることは非現実的であり、志向すべきではありません。顧客が少ない市場では、万人向けの全方位戦略ではなくて、特定の顧客を対象にしたニッチ戦略をとることが定石です。

私立中高(以下、私学)においては、まず自校はどのような受験生保護者層(セグメント)をターゲットにするかを定め、次にそのコア・セグメントに響く入試広報活動を再構築するアプローチが重要です。


■大手町ランチタイムの例


東京のビジネス街の代表である大手町では、昼に食事をする店を確保するのが一苦労です。12時近くになると、オフィスから昼食を求める人が一斉に街へ出て、お目当ての店をめざします。おいしくて価格が手ごろな人気店にはすぐに行列ができるので、待てない人は別の店で我慢することになります。

大手町のランチタイムは、食事をしたい人(需要)に対して、食事を提供できる店(供給)が少ない状態になります。需要が供給を上回っている状況では、人気店に限らずそこそこの店でも客が入ります。休憩時間が決まっているので、客はそこそこの店でも選ばざるを得ないのです。

しかし、13時を過ぎると今度は需要と供給が逆転します。客は自分が好きな店を自由に選ぶことができるようになり、そこそこの店には見向きもしません。

私学の市場はすでにピークアウトし、年を経るごとに供給過多になっています。これまでは、一定の水準を満たしている学校には生徒は集まりましたが、これからはそうはいかなくなるでしょう。


■コア・セグメントの意味


私学市場の需要と供給のバランスがとれているうちは、学校の特徴を明確に打ち出さなくても入学者を確保できました。ただし、入学者の中には第一希望で入った生徒だけでなく、合格した学校の中から消去法で「仕方なく」入学した生徒もいるかもしれません。

これまでの私学の生徒募集の主眼は、数多くの受験生を集めることにあり、どの学校も「あれも・これも」と自校の良さをアピールしてきました。その結果、保護者にはどの学校も同じように見え、学校の特徴が伝わりませんでした。ほとんどの私学が、いわゆる万人受けをする入試広報を展開していたのです。

では、すべての受験生保護者が満足するような学校を創れるでしょうか。有名大学に進学させたい、部活動で全国大会に出させたい、手取り足取り面倒をみて欲しい、成長につながる経験をさせたい、・・・。保護者の学校への期待はさまざまであり、そのすべてに応えるには予算も人材も時間も足りません。だからこそ、私学は自校のコア・セグメントを定め、そのセグメントに軸足をおいた入試広報を行う必要があるのです。


■保護者の意思決定要因


保護者が受験校を選ぶときには、まず入試の偏差値、通学時間、共学・別学などの(A)選択基準で候補を絞り、次にどのような生徒を育てたいのかという(B)教育方針と、カリキュラム、施設・設備、教員など(C)教育方針を担保する仕組みを確認し、最終的にどのような生徒が育っているのかという(D)成果で検証する手順を踏みます。一言でいえば、「この学校でわが子はどのように成長するか」の確認作業を行っているのです。

この構造を念頭において、保護者がなぜ自校を受験したのか、すなわち受験した意思決定要因を探ります(下図の例参照)。このとき、各校が普段からアピールしている項目や、保護者からの評価を確認したい項目も織り込むとよいでしょう。

図1:意思決定要因の例
図1:意思決定要因の例

そして、アンケートを実施して、小項目ごとに保護者の評価(とても魅力的~全く魅力を感じない)を聞きます。教員にも同じ内容のアンケートを実施すると、学校側の評価と保護者の評価のギャップを知ることができます。

 

■選ばれる学校づくり

 

アンケートで保護者の価値観やニーズと、受験の意思決定要因を同時に聞いて、セグメントごとの意思決定要因を整理します。学校が思ってもいなかった項目が評価されることもあるし、逆に学校が注力している項目が評価されないこともあります。

受験生保護者のセグメントごとの構成比が計算できるので、最も構成比が高い(人数が多い)セグメントを暫定的にコア・セグメントとします。学校によっては、違うセグメントをコアにしたいこともあるでしょう。しかし、短期間に教育方針や仕組みを変えることは難しいので、ある程度の時間をかけて、目指すセグメントの比率が高まるような学校づくりをすることになります。

重要なことは、全てのセグメントに気を配るのではなく、コア・セグメントの満足度を高める取り組みをすることです。それは、セグメントごとに異なるニーズ全てに対応しようとすると、アピールポイントがぼやけてしまうからです。これからの選ばれる学校づくりには、この重点化発想が大事になります。

 

ところで、前述の(A)~(D)の意思決定要因のうち、学校が努力すれば変えられる項目(可変項目)と、変更できないか、変更に時間を要する項目(不変項目)があります。(A)選択条件の多くは不変項目で、C)教育方針を担保する仕組みには可変項目が多く含まれます。そこで、コア・セグメントが評価している(C)の項目に磨きをかけ、学校説明会やホームページでこの項目を強調すると、学校の特徴がより鮮明になります。

 

これからの選ばれる学校とは、「どの保護者層に選ばれるために、どのような価値を提供するかを考え、実行する学校」ではないでしょうか。

 
 
 

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